Nikon D500
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR
曽野綾子さんの「透明な歳月の光」733 夫の旅立ち に、
ご主人の様子が書かれていた。
・・・たくさんの人たちの配慮に包まれて、夫はこの世を去った。
口も態度も悪い人だったから、改めて感謝もしなかっただろうけれど、
彼の生涯が平穏そのもので明るかったのは、
良き人々の存在に包まれていたからである。
死の朝の透明な気配を私は忘れない。私は前夜から病室に泊まっていたが、
夜明けと共に起きだしてモニターの血圧計を眺めた。
何度も危険な限界まで血圧が下がっていたが、その朝は63はあって呼吸も安定していた。
朝陽が昇り始め、死はその直後だった。
病室は16階だった。
西南の空にくっきりと雪をかぶった富士が透明に輝いており、
自動車も電車も通勤時間に合わせて律儀に走り回っていた。
それが夫の旅立ちの朝であった。
改めてご冥福をお祈りいたします。