水泳部と言っても屋外プールだったし寒い信州だから部員の数も少なかった。
部活の教師も滅多に顔を出さず、少数の部員が自主的にメニューもこなしていた。
単調な泳ぎを続けるだけだったから皆その子を見た。
しかしこちらを見ていず視線を合わせる事は無かった。
プールの中央部まで泳いで来ると大変な事に気付いた。
スカートの中が見える!
次第にみなが気付きはじめターンの時に囁き始めた。
クロールが種目のキャプテンは左で息継ぎをする人だったが、常に階段側で息継ぎをした。
平泳ぎだった自分は正面でないと変だったし、バタフライだったKは余裕で、背泳ぎの先輩は横が向けず悔しがった。
2、3回来たと思う。
何時も水泳部に来ながら誰とも話をせず、こちらに顔を向けることは無かった。
ひとしきり夕暮れ時のプールサイドの最上段に佇んだ後、スカートをなびかせ颯爽と去っていった。
この話をし終わると隣の席でも偶然彼女の話をしている事に気付いた。
向こうでも彼女の話をしていたんだと内容を尋ねた。
「彼女は亡くなったんだよ」